第7話 資格を取るなら“名称独占”より“業務独占”を考える

退職後に資格を取ろうと考える人は少なくありません。

私自身もいくつかの資格を取りました。
その中には国家資格もあります。
ただ、正直に言えば、取得した資格証の多くは、今も引き出しの奥に眠っています。

これは少し情けない話でもありますが、資格取得を考えている方には、あえて書いておきたいことです。

資格は、取れば人生が変わる魔法の道具ではありません。

もちろん、資格が役に立つ場面はあります。
再就職で評価されることもあるでしょう。
副業や独立の入口になることもあります。
学ぶ過程で知識が増え、人とのつながりができることもあります。

ただし、資格には種類があります。
そして、その違いを知らずに高い受講料と時間をかけると、思ったほど仕事につながらない場合があります。

資格には、大きく分けて「業務独占資格」と「名称独占資格」があります。

業務独占資格とは、その資格を持っていなければ、特定の業務を行ってはいけない資格です。
たとえば医師や弁護士などが分かりやすい例です。
もちろん、これらは簡単に取れる資格ではありません。
長い学習期間や実務経験が必要なものも多くあります。

一方、名称独占資格とは、その資格を持っていなければ、その名称を名乗ることはできないものの、似たような業務自体は資格なしでも行える場合がある資格です。
つまり、肩書きとしては意味がありますが、その資格がなければ仕事そのものができない、というわけではないケースがあります。

ここを理解しておくことは大切です。

退職後に資格を取る目的が、学び直しや自己成長であれば、名称独占資格でも十分意味があります。
講座に通い、新しい知識を得て、人と出会う。
それだけでも価値はあります。

しかし、資格を使って実際に収入を得たいと考えるなら、もう少し慎重に選ぶ必要があります。

その資格を持つことで、どんな仕事ができるのか。
実際に求人はあるのか。
未経験の60代でも採用される可能性はあるのか。
独立する場合、顧客をどう獲得するのか。
資格保持者はすでにどれくらいいるのか。
その市場は伸びているのか、縮んでいるのか。

ここまで調べてから動いたほうがよいと思います。

資格学校の広告を見ると、どうしても夢が広がります。
「人生後半の新しいキャリア」
「定年後も活躍できる」
「未経験から目指せる」
こうした言葉は魅力的です。

しかし、広告は基本的に受講してもらうためのものです。
その資格を取った後、本当に仕事になるかどうかは、別の問題です。

私自身、資格を取ったことで得たものは多くありました。
知識も増えました。
人との出会いもありました。
退職後の空白感もかなり埋まりました。
その意味では、講座に通ったことを後悔していません。

ただ、資格そのものが直接収入につながったかと言えば、そう単純ではありません。

退職後の資格取得には、二つの目的があると思います。

一つは、実利です。
再就職、副業、独立、収入。
これは現実的に考える必要があります。

もう一つは、心理的な意味です。
学び直し、居場所、仲間、自信、生活リズム。
こちらも、決して軽く見てはいけません。

大切なのは、自分がどちらを求めているのかを、ある程度分かっておくことではないでしょうか。

収入につなげたいなら、業務独占性や求人状況、実務経験の必要性まで調べる。
居場所や学びを求めるなら、講座の雰囲気や受講生同士の交流も含めて選ぶ。

どちらが正しいという話ではありません。
ただ、目的を取り違えると、後でがっかりしやすくなります。

資格を取ることは、退職後の人生を動かすきっかけになります。
しかし、資格はゴールではなく、あくまで道具です。

その道具を何に使うのか。
それを考えながら選ぶことが、退職後の学び直しでは大切なのだと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回は、会社に行かなくなった男が家庭で直面することについて、私の体験をもとに書いてみます。

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