退職後の大きな変化の一つは、毎日家にいるようになることです。
これは、本人にとっても家族にとっても、思っている以上に大きな出来事です。
会社員時代、私は家を空けることが多い生活をしていました。
出張も多く、月の半分ほど家にいない時期もありました。
そのため、家の中の日常について、分かっているようで実はあまり分かっていなかったのだと思います。
退職して毎日家にいるようになると、それまで見えていなかったものが見えてきます。
妻がいつ出かけるのか。
家事をどの順番でしているのか。
昼間にどんな過ごし方をしているのか。
買い物に行くと言って、どれくらいで帰ってくるのか。
会社員時代なら気にしなかったことが、なぜか気になるようになります。
これは、妻にとっても迷惑だったと思います。
それまで自分のペースで回していた日常に、急に監視役のような人間が一日中いるのです。
しかも、その監視役は、自分では監視しているつもりがない。
ただ家にいるだけだと思っている。
しかし、見られる側にとっては、かなりの圧迫感だったはずです。
私のほうにも言い分はありました。
現役時代、出張先のホテルのカフェなどで、平日の昼間に楽しそうにランチをしている女性グループを見かけることがよくありました。
もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。
友人と食事をするのは自然なことです。
ただ、当時の私は、これから仕事に向かう身でした。
忙しさや疲れもあり、心のどこかで「こちらは働いているのに、いい気なものだな」と思ってしまうことがありました。
今思えば、ずいぶん勝手な見方です。
それでも、退職後に妻がよく出かける姿を見ると、かつて見た平日ランチの光景と重なってしまいました。
スーパーに行くと言って出かけたのに、なかなか帰ってこない。
友人と会っているらしい。
どこかで昼食をとっているらしい。
そういうことが続くと、だんだん腹が立ってくる。
自分でも器が小さいと思います。
けれど、そのときは本当に気になったのです。
そして、ある日、言ってしまいました。
「出かけるのはいいけれど、家のことをちゃんとしてからにしてほしい」
言い方はもう少しきつかったかもしれません。
今となっては、あまり思い出したくない場面です。
妻からすれば、突然何を言い出すのか、という気持ちだったでしょう。
これまでも同じように暮らしてきた。
それなのに、夫が退職して家にいるようになった途端、急に口を出してくる。
これはたしかに、たまったものではありません。
退職後の夫婦関係で難しいのは、夫側が生活環境の変化を自分だけの問題だと思いがちなことです。
しかし実際には、妻の生活も大きく変わります。
夫が退職する。
毎日家にいる。
昼食も必要になる。
自分の外出も気をつかう。
家事のやり方に口を出される。
妻から見れば、これまで築いてきた日常に、突然大きな存在が入り込んでくるわけです。
夫は会社での居場所を失い、家庭に居場所を求める。
しかし妻にとって家庭は、すでに自分の生活の場です。
そこへ夫が何の調整もなく入ってくると、衝突が起こるのは自然なのかもしれません。
退職後の夫婦関係を考えるとき、私はこのことを忘れてはいけないと思っています。
夫は「自分が家にいるようになった」と考える。
しかし妻から見ると、「夫が家に入り込んできた」のです。
この違いは大きいです。
私自身、そのことに気づくまで少し時間がかかりました。
そして、気づいたあとに考えたのは、自分も家の外に居場所を持つ必要があるということでした。
家庭だけを居場所にしようとすると、妻に負担がかかります。
こちらも妻の行動が気になり、余計な口を出したくなります。
お互いにとってよくありません。
退職後の男性に必要なのは、家庭以外の行き先なのではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回は、私が夫婦関係を壊さないために始めた、外へ出る習慣について書いてみます。
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